Arbinger Blog

2016/02/12

□アービンジャー「箱」NEWS【Vol. 347 】2016/2/12

みなさん、こんにちは。
アービンジャー、見習いファシリテーターの石橋です。

受験シーズン真っ只中!
インフルエンザで学級閉鎖になる学校も出始め、
受験生を持つ家庭は、子どもの成績や精神面だけではなく、体調面でもピリピリと気が抜けない状況だと思います。毎年のことですが、大変な季節です。
普段は特定の教室で生徒や保護者の対応をしたりすることはあまりないのですが、この時期はたまに、進路についての面談をしたりすることがあります。
先日、こんなことがありました。

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■ チェンジ : 石橋 晃
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先日、ある中3生の進路について保護者と面談をする機会がありました。
その生徒は、中3の夏休みが終わってから別の塾から転塾してきたのですが、
入塾した当初は、

高校は別にどこでもいい、
将来も自分一人でそこそこ食べていければいい、
職業もなんでもいい、
大学も行く気はない、
結婚するつもりもない、
なんでもいい。

といった感じで、とにかく覇気がなく、
最初は「表面上」はおとなしく真面目にやっているフリをしているような感じの生徒でした。
その後、目標の高校(出来るだけ遠い、知り合いのいない高校)を決めたあたりから、毎日塾に来て勉強もするようになり、
その一方で、毎日色々な話をして塾にも慣れていく中で、だんだんと隠していた本性を現していくようになりました。一言でいうと、かなりウザイ。(笑)

とにかく屁理屈が多く、
人の意見を素直に聞かない、
わがまま、自分勝手、甘えん坊、、、
根本的には本人も言っている通り、いわゆる「コミュ障」なのですが、
一度、本性を晒した相手には遠慮なく突っかかってくる、、、
相手をしながら、子ども相手に「箱」に入ってしまうことが何度もありました。((+_+))

そんな生徒ですが、
私立高校入試は受験した高校全てに見事合格することができました。

あとは、1か月後に迫った本番の公立高校入試へ向けて頑張るだけ、という時になって、
突然、お父さんから受験校を変えたほうがいいのではという話が家で出ました。

このまま普通科の公立高校にいって何になる?
大学にはお金もかかるから行かせられない、
どうせ就職になるなら、資格などが取れる工業や商業などの専門科の高校に行った方がいい、
そんな風にお父さんが突然言い出したそうです。

「で、どうするの?」
「俺はこのまま自分で決めた志望校を受験したい」

塾に来た最初の頃はあれだけやる気がなかったのに、
今では、毎日塾にも来て本当に頑張ることができるようになったのは、
人生で初めて自分で目標を決めたから。
それを今になって突然やめろなんて、親は本当に子どものことを真剣に考えているのか!?
と、だんだん腹が立ってきて、
保護者に教室に来てもらって面談をすることになりました。

お母さんとお父さんと本人と僕の4人での話し合いの中、
やはりお父さんからは、工業系の高校に進んだ方がいいのではないかという話が出てきました。隣でなんとも複雑な表情浮かべながら座っている生徒の顔を見ながら、
この数か月間、どれだけ彼が変わったか、どれだけ頑張ってきたか、どれだけ今頑張っているかを話していきました。
でも、お父さんの表情は変わりません。生徒の顔にも諦めの表情が浮かんだままです。

しかし、話をしている中で、ふとあることに気づきました。
それは、お父さんと僕で、話している「時間軸」が違うんだということ。

お父さんは、息子がこれまで生きてきた15年間という時間の中で、
僕は、塾に来てからの数か月間という時間の中で、彼の将来を見ていました。

つまり、この塾に来る前までの、
やる気のない息子、言うことを聞かず反抗的な息子、成績の振るわない息子、自分の意見を持たない息子、
そんな息子を見てきたからこそ、大学に行けるかどうかという次元ではなく、そもそも就職すらできないんじゃないかと、息子の将来のことを真剣に心配してお父さんは話しているんだということに気づきました。

そして、そのことに僕が気づいたのと同じタイミングで、
お父さんの意見も変わっていくのを感じました。

この塾の先生は、息子の頑張りを見てきた、もっと頑張れると思っている、この子には自分で自分の人生を決めて切り開いていける可能性があると信じている、
だから、本人が決めたようにやらせてほしい、それで大丈夫だと心底思っている。
お父さんは、そんな風に感じてくれたんだと思います。

面談が終わった後、

「あのさ、途中から父さんと先生の言っていることチェンジしなかった?」
「先生は、将来のことを考えると工業系という選択でも悪くないかもって言いだして、父さんは本人が決めたことならそれでいいって言いだしたよね?」

と言われました。(笑)

「ごめん、でも、聞いててどう思った?結局、どっちもお前のこと心配して言ってるだけってわかった?」
「うん」

常に大切にしないといけないこと。
「そもそも、どうしたいのか、どうありたいのか、どうあってほしいのか」
それだけ忘れなければ、僕らが「選択」したことに間違いはないんだろうって、
思える出来事でした。

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■ 編集後記
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「で、お前、どうしたいの?」
「やっぱ普通科がいい」
「なんで?俺は工業系でもいいと本当に思ってるよ」
「だってさ、、、工業高校行ったら、高校に行ってから塾に通う必要なくなっちゃうじゃん」

あんなに憎たらしく、心底ウザイと思うこともあった生徒でしたが、
そんな風に言ってくれて心から可愛いと思えました。(*^-^*)

「そんなの関係ないだろ。高校も塾も、どうするのか決めるのはお前なんだから」

受験まであと1ヶ月。
どんな結果になるかはわかりませんが、自分で決めた「選択」に胸を張れるよう、最後まで精一杯頑張ってほしいと思います。