□アービンジャー「箱」NEWS【Vol. 163 】2012/6/8
こんにちは。アービンジャー・ジャパンの橋口遼(はしぐちりょう)です。
みなさん。はじめまして。
今回から記事に参戦する運びとなりまして、これから長いお付き合いになると
思いますが、宜しくお願い致します。
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■ 命日 : 橋口 遼
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記事を書いている今日は5月25日。
大好きだった先輩の命日だ。
その人は、38才の時に大腸ガンでこの世を去った。
『まだ若いのに・・・』
と、周りの人たちは言うけれど、僕たちからしたら、
『そりゃ、早死にするわ!!!』
と、いう感じだ。
なぜなら、その人は“滅茶苦茶”だったからだ。
たとえば・・・普通に車を運転していても、気に入らない車が目の前にくると、カーチェイスがスタートする。終いには高速道路なのに、車を停めて、相手の車に怒鳴りつけに行く・・・
たとえば・・・借金しているのに、そのお金を借りている人の前で、お金を返さず、ブランドのバッグとか服とか平気で買う。しかも、相手が
『そんなことするなら先に俺に金返してよ~』って言うと、
『抗がん剤をうち続けてる俺に、そういうこと言うの?
俺も返したいのはヤマヤマだけど、治療費にお金かかるのよ~』
と、自分の病気すらもネタにして、自分の正当性を訴える。
たとえば・・・好きな人がいると会社の女の子から相談を受けて、
『わかった。俺に任せておけ!』
と自慢げに言い、
『みんなで遊びに行く段取りをするから、そこでいい感じになるようにセッティングするよ!』と言っていたのに、うまく行かなかった帰りの電車の中で、
『そもそも俺に頼むのが間違ってるよなぁ』
と言って、相談した女の子を泣かす。
そして、みんなの目の前でその話を笑い話にする。
他にも数え切れないくらいのネタがあるが、ここでは書けないネタばかり・・・
そんなことを思い出しながら、先輩の実家で先輩のお母さんとみんなで食事をした。
先輩が死んで3年たつ。
思い出すことは笑い話になっているけれど、お母さんからしたら一人息子なわけで・・・
当たり前の様に仏壇に遺影はあるし、歴代のご先祖様の写真の中にひと際若い先輩の写真があったり・・・
やっぱり滅茶苦茶な先輩でも家族がいて、実家がある。
一緒に思い出しながら、お母さんも一緒にバカ笑いはするけれど、
時折見せる悲しみの目を、みんなが揃って、見て見ぬ振りをする。
命日は1年に1回、故人を偲ぶ日だけど、僕にとっては大笑いする日。
先輩と仲の良かった女の子は、今日は一年で一番笑う日なんです。
くだんないこと言ってバカみたいに笑ってコーラ飲んでセブンスター吸ってチップスターを食べる日なんです。と言っていた。
お母さんにとっては、悲しみを思い出し、息子のことを改めて胸に刻む日なのかもしれない。
それぞれ、尊び方があって、そんな人たちと共存しているから毎日がおもしろいのかも。
と、過去の自分の行動を正当化する今日この頃。
実は、4年前、僕が新婚旅行から帰ってきて、携帯の電源を入れると、いろんな人からの着信履歴があった。『まさか・・・』とは思ったけれど、案の定予感的中。
すぐさま隣の県のまで、会いに行った。
病室のベッドでやせ細った先輩はみんなに手を握られて、みんなに見守られながら、
ベッドの上で口をパクパクさせていた。
僕たちが病室に着くと、すぐさま先輩の近くまでみんなが席を譲ってくれた。
『中山ちゃん。りょうちゃんきたよ。』とボスが言っても、変わらず口をパクパクさせていた。
『がんばれ!』と言いたいけれど、がんばっている人を目の前にして、言葉にならなかった。
他にもたくさん、先輩に言いたいことはあったけれど、しゃべることができなかった。
もとい、しなかった。
その後、ドラマのワンシーンのような光景が、目の前で繰り広げられていたのを、
ただ呆然と見ていた。
心電図が直線になって、「ピー・・・」と無機質な音を出す。
やがて、先輩のお姉さんが病室にやってきて、心臓マッサージをする。
先輩のお姉さんは看護婦だから、心臓マッサージがうまい。
マッサージのたびに心電図の直線が大きく振れる。
生き返る。しかし、マッサージをやめたら心電図が無機質な音を出して、死ぬ。
生き返る。死ぬ。の、繰り返しだった。
やがて、お母さんが
『もういいよ。』と言った。
みんな泣きながら先輩を見送った。
先輩の目からは涙が滴り落ちていた。生気のない顔を一滴の涙が頬をつたっていた。
僕はただその光景を見ている人だった。
先輩と最後の言葉を交わすことができなかった。
先輩の命日はその自己裏切りを思い出す日。
みなさんは大切な人がいなくなる前に、やり残したことはないですか?
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■ 編集後記
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食事会のときに、みんな先輩にこういう風に騙された。と笑っていたら、
すかさずお母さんが
『みんなそんなこと言うけど、一番あの子に騙されてるのは私なんだからねww』
と言っていた。
来年はお母さんがどんなことで騙されていたのか発表するらしい。
来年の5月25日も楽しい日になりそうだ。