□アービンジャー「箱」NEWS【Vol.337】2015/11/27
■あらゆる職場に活かす「箱」の法則
多くの人は組織を通して生活をしていると思います。
日本の生活水準、教育水準を世界的に見た場合、企業、会社、組織のトップは経済活動を促進させ社会の発展に間違いなく貢献してきたということになります。その企業、会社、組織に対する貢献を通じて、多くの人は社会の発展に間違いなく貢献してきたということになります。
では、なぜ社会的な貢献を果たしてきた実績のあるトップが悩み苦しみ続けるのでしょうか。なぜ、社会的な貢献を果たしてきた従業員が悩み苦しみ続けるのでしょうか。
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「キャリア採用」
スリーピースの細身のスーツ。
控え目が洗練された濃いブルーのネクタイ。
謙虚さをアピールするために、カフスは止めておこう。
靴は200年の歴史を持つバーウィック。
フランス・スペイン連合軍の指揮官ベリック公爵が名前の由来だ。
そして、個性を出すためにハイカット。
眼鏡はより雰囲気を醸し出すために「SAMURAI SHO」。
鏡の前に立つ私は誇らしくもあった。
様々な経験を積み、自分のキャリアを手に入れたのだ。
これで社長室・室長という肩書に見合った「自分」をつくりあげることができる。どうやら私は最年少のようだ。絶対に舐められてはいけない。
その日は、幹部社員が集まりキャリア採用の辞令式が行われる。挨拶もシンプルで短めに用意した。余計なことは言わない。
完璧だ。絶対に大丈夫なはずだ。
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今思うと私は自分のことしか考えていませんでした。箱の中で起こす自己正当化の特徴の中で言えば「自己中心的」「自己防衛」です。ここでは、顧客、上司、同僚、部下というものは一つも出てきません。
私は一体、何のためにこの会社に入社するのだろう。もちろん、業績をあげるためです。そのためのキャリア採用なのです。
しかし私は、自分自身を会社の業績をあげる「便利な道具」として扱っていたのです。つまり、自分自身を「物」として扱っている以上、相手ももちろん「人」ではなく「物」として扱うのは自然の結果だったと言えます。
そもそも、私は自分自身を「人」として見ていなかったのです。
「知の巨人」「マネジメントの父」「マーケティングの祖父」「現代社会最高の哲人」と呼ばれるドラッカーはこう言います。
「心理学の目的は、自らの洞察であり、自らへの理解である」また、「仕事のうえでの人間関係は尊敬を基礎に置かなければならない」
企業、会社、組織にはそれぞれ特有の「目的」があります。そのことについての理解と共感、そして何よりそれらを具体的な仕事として落とし込んでいくことが職場では必要不可欠です。
冒頭にありました、「なぜ社会的な貢献を果たしてきた実績のあるトップが悩み苦しみ続けるのでしょうか。」「なぜ、社会的な貢献を果たしてきた従業員が悩み苦しみ続けるのでしょうか」。
この問いに対する最初の解答は…
人間関係の基礎である「尊敬」がないことによる影響と言えるのではないでしょうか。
相手を「人」として尊敬するということの前に、自分を「人」として大切にすることが先立つということです。それには「自らを知る」ということが欠かせません。
「汝、自身を知れ」~ソクラテス~
最後までお読み頂き有難うございました。
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■ 編集後記
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今回のメルマガの内容は、今から4年くらい前の話しです。
『自分の小さな箱から脱出する方法』の原題は、『Leadership and Self-Deception: Getting
Out of the Box』となり、「リーダーシップと自己欺瞞~箱から出るということ」というものです。
当時、私は自分に問題があるということに全く気付いていない状態でした。そして、あらゆる問題を引き起こしているのが自分であるということにすら気付いていませんでした。まさに自己欺瞞の象徴であると痛感しています。