Arbinger Blog

2014/12/05

□アービンジャー「箱」NEWS【Vol.287】2014/12/05

みなさん、こんにちは

年の瀬、 師走、
そうです。 忘年会シーズンに突入しましたね。
食べ過ぎ、飲みすぎには、くれぐれも気をつけましょうね!

先週の多~ちゃん、に続くのは、

連日二日酔い?の 斎藤みのる です。

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■   やった者損                 :  斎藤 実
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隣の会議室から、きびしい声が聞こえてきた。

「なんで、こんなもの引きうけてきたの?
基盤チームが大変だからって、あなた、パラメータの設定検証なんてできるの?
うちのチームでやらないといけないことが、今、どれだけあるのか、
よくわかってないんじゃないの!?
誰ができるのっ、こんなことを!」

若手社員に向かって、先輩が、険しい表情で叱っている。

ふっ、と私が新人の頃のことを思い出していた。

隣のチームの同僚が、大量の検証作業が終わらないのを、不憫に感じて、
手伝っていた時に、 チームの先輩から、

「それは、おまえの仕事じゃないだろう?
昨日依頼したタスクは、もう終わったのかっ!?」

と厳しく言われ、検証作業から途中で抜けることを同僚に伝え、自分の仕事に、
仕方なく戻った。

その結果、同僚は徹夜で検証作業をやるはめになった。

それ以来、私は、”調整”という便利な言葉を使いながら、
立場の弱いメンバーや、充分な情報を持たない相手からの依頼を打ち返して、
相手により多くの仕事を負わせたり、
はっきりしないメール文章をわざと使ってうやむやにして、自分の仕事から切り落とし、
隣のチームの同僚にその仕事を拾わせたり、
相手が言っていることと同じ内容を自分の言葉で覆いかぶせて、さも自分のプラン、
アイディアかのようにして主導権を握り、最後には相手に多くの仕事を負わせたり…。

ある大きな組織の中での仕事の仕方を覚えていった。

そして、その組織で大きな問題が発生した時には、上司に向かって、

「当然、隣のチームが担当しているものだと思っていました!」
「隣のチームの守備範囲だし、何が原因か、直ぐにわかる状況ではないですか?」
「ちょっと気にすれば、集まる情報ですよ、このレベルはっ!」

等と評論家のように語り、他チームの同僚を非難していた。

”私はこの組織の底流に流れる価値観をよく理解している職員だ”

勝手に自分で創りあげたイメージにたよりながら、職場生活を過ごし続け、
いつのまにか、自分が本当にやりたいことを、素直にできなくなっていた。

その時、考えていること、

「もしも”やりたい”、と言ってしまったら、
周囲からどのように見なされるかが、
気になってしまって、やっぱりできないよ!」

「もしも”やりたい”、と言ってしまったら、
想像以上に大量の仕事を無茶振りされるのが怖くて、やっぱりできないよ!
ただでさえ忙しいのに、自分だけが更に忙しくなっていたくないよ!」

いつも底流に流れる価値観に、たよりたい…、依存したい…。

そして、大義を見つけ、ぴたっ、とするときだけ、
周囲から評価されやすい仕事を選んでする自分。

この頃、プライベートでも同じようなことが起こっていた。

家内や息子たちに、自分がしてあげたい、と一瞬思っても、しない。
しないことを正当化する理由を見つけるのに、必死だった。

家族を不幸せにしていた。

今でも、箱に出会う前の頃を思い出すたびに、申し訳ない気持ちと、
自分への情けなさとで、胸が痛む。

(我に返って)

隣の会議室から、先輩社員が不機嫌な表情で出ていった。
会議室を覗くと、若手社員が目をつぶってうつむきながら、頭を左右に小さく振り、
ほどなく、会議室から先輩の後を追うように、出て行った。

自分が今、彼に、この若手社員に、できることって、何だろう?

そうだ! まず、彼の話を聴いてあげたい!

じっくり話を聴いてあげたい!

あっ、え~っと、確か、彼は、開発4部の清水くん、だったよな!
よし、これから、彼に、コンタクトしてみよう!

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■ 編集後記
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翌日、私は、清水君の話を、二時間、じっくり聴いた。

上司、同僚への愚痴、
与えられた仕事をこなすだけで、
朝、オフィスの前で、本当の自分に蓋をして、建物に入ること、
入社の動機、学生時代のこと、
家庭のこと、趣味の事、本当にやりたい仕事のこと、将来の夢なんかないこと、…。

何の評価もせずに、相づちを打ちながら、「ただ聴く」ことを、私は心がけた。

帰り際、清水君は清々とした表情になっていた。

「何となくお役に立てたかもしれない」
話を聴いた後、そう感じていた。

その翌日のランチの時、ある飲食店で食事をしていると、
ついたてをはさんだ隣の席から、最近聞いたことがある声で、
「いや~、昨日、人事の室長から呼び出しがあって、二時間も説教されたんだよね。
それがさぁ、小難しいことを、言うんだよ! つかれちゃったよぉ!
その時丁度トラブルが起こって、上司が俺のこと、探していて、席に戻ったら、
また、怒られたちゃってさぁ…。 まじで、今の上司と合わないんだよなぁ~!」

「 … 」
(心の中で)
「ふざけるなっ!
これを、“ただ聴く”ことなんて、できるわけがないだろぅっ!
くぅ~っ!、 ついたて越に、胸倉をつかんでやりたいぃ…!」

熱いカレーうどんを、ずるずるとすすり、ほとんど噛まずにぐっと飲み込んで、
何とかこらえた。

日々是修行。
自分の箱とのつきあいは、始まったばかりだ。